医療過誤事件の流れ
医療過誤事件について、ご依頼いただいた場合、事件が終結するまでは次のような経過をたどります。
①ご相談・受任
医療過誤が疑われる事案について、ご相談を受け、今後の見通しや提供できるサポート内容、料金等について説明させていただき、ご納得いただいた場合には、契約手続きに進むこととなります。なお、当所では、オンライン面談や電話でもご相談を受け付けていますが、お手持ちの資料がございましたら事前にご提供いただくと、よりスムーズにご相談が進むかと思います。
②証拠保全
医療機関がカルテ等を改ざんする恐れがある場合などに、裁判所に証拠保全の申し立てを行います。これが認められると、裁判官らが直接医療機関に赴き、カルテ等の開示を求め、写真やコピーをとって、証拠の保全を行います。ただし、全ての案件で証拠保全の手続きを行うわけではなく、改ざんのおそれが高いと考えられる場合や、医療機関が任意開示に応じない場合などに証拠保全の手続きをとります。
③医療調査
カルテ等の医療記録、医学文献、顧問医の意見などから、医療機関に対する法的責任の追及は可能かどうかを調査し、報告書にまとめたうえで依頼者に報告いたします。今後の相手方との交渉や、訴訟提起の可否にも大きくかかわる部分ですので、調査開始からご報告まで概ね3カ月程度のお時間をいただいておりますが、複雑な事案、結果が重大な事案については、さらにお時間をいただく場合もございます。
④交渉
医療調査の結果、医療過誤があり法的責任を追及できるとなった場合、慰謝料等の損害額を計算したうえで、相手医療機関と交渉を開始します。
相手医療機関が、交渉段階でこちらの請求する金額をそのまま支払うことはまずありません。そのため、過失を裏付ける証拠や、損害計算の根拠となる資料を提示し、交渉を進めていく必要があります。
交渉の結果、合意ができれば⑸示談成立へ、合意ができなければ⑥訴訟提起へ進むことになります。
⑤示談成立
交渉の結果、相手医療機関との間で賠償金の額について合意ができれば、示談書を作成し、賠償金の支払いを受けることになります。示談による解決は、交渉を重ねる回数やペースにもよりますが、訴訟を提起する場合と比較して短期間で終結することがほとんどです。
また、示談による解決の場合には、訴訟による解決と異なり、単なる金銭の交付だけでなく、医師の謝罪文言を入れるなど、多様な解決の方法をとることができます。
⑥訴訟提起
交渉による合意ができなかった場合、賠償金の支払いを求める訴えを提起し、医療過誤の有無、賠償金の額について、裁判所の判断を仰ぐことになります。
医療過誤の訴訟は、証拠の専門性が高く分量も多くなるケースが多いため、他の民事訴訟と比較しても判決までに時間が長くかかるのが特徴となっています。
⑦訴訟上の和解
訴訟が提起され、訴訟手続が進行している最中でも、裁判所は和解の打診を行ってくる場合があります。このとき裁判所が両当事者に提示する和解の案は、その時点での裁判所の心証に基づいて作成されていると考えられるので、提示された和解案によってある程度判決の見通しを立てることが可能です。
ただし、和解案でこちらに有利な案がでた場合に、必ず勝訴判決がでるとは限りませんし、上訴されて訴訟がさらに長引くというリスクもあるため、和解に応じず強気に判決を求めるという姿勢が常に正しいとは限りません。また、和解案がこちらに不利なものだった場合でも、上訴審で巻き返せる見込みがあるケースもあるため、敗訴で賠償金を得られないよりは少ない額でも受け取って和解するという姿勢が常に正しいとも限りません。
したがって、訴訟上の和解に応じるか否かは、弁護士とよく検討したうえで判断するべき事項といえます。